適度にドキドキ、時に可笑しく、よくできたアドベンチャー映画【太陽の下の10万ドル】です。
フランス流のウエスタン・ロードムービーでもあり、トラックがトレーラーを追っかけ、親友同士が敵同士になり、仕掛けてシテやられての繰り返し。
モロッコの砂漠や山岳地帯の道を大型車が走る場面は、その景色の美しさも含めて見モノです。
映画『恐怖の報酬』のような “スリル” を期待すると失望するので、作品中に挟まれる小話と会話を味わう “コメディ” として観ることをオススメします。
Table des matière
作品情報
【太陽の下の10万ドル】
原題 « Cent mille dollars au soleil »
監督 アンリ・ヴェルヌイユ
台詞 ミシェル・オディアール
出演 ジャン-ポール・ベルモンド
リノ・ヴァンチュラ
ベルナール・ブリエ
公開年 1964年
上映時間 130分・白黒
ジャンル アドベンチャー
あらすじ
サハラ砂漠の玄関口、モロッコの街ブリマ。運送会社社長カスタリアーノは、ある闇荷物を運送するために新品のトレーラーを用意し、スタイナーという新顔トラック運転手を雇った。
運送出発の当日、予定時刻にトレーラーは運送会社を出発して行ったが、運転していたのはスタイナーではなく別の運転手ロッコだった。ロッコは道中で愛人ペパを拾い、ふたりでトレーラーを盗み逃走を図る。
事情を理解した社長カスタリアーノは激怒。運転手マレックに最終200万フランを提示し、ロッコの追跡に送り出す。マレックは新人スタイナーを相棒にとり、同僚ロッコ追跡のためにトラックを走らせる。山間部でロッコのトレーラーとマレックのトラックの競り合いが続くが、ロッコはなんとか逃げ切る。
マレックが最終目的地のムソラに着いた時、偶然ロッコをとある店で見つける。ふたりは殴り合いになるが、突然ロッコが事の成り行きを白状しはじめ…
感想
心臓バクバクで手に汗握る!とかいう場面がなかったので、迫力に欠けるなあと思いつつ観ていたのですが… 130分と長い作品がアッと言う間だったので、実際はかなり集中して観てしまったようです。それなりに良くできた作品です。
登場人物の設定がなかなか多彩で面白いです。
オディアール作の名台詞を連発する、運送会社社長カスタリアーノ。
ヘラッとしてるけど、なかなか頭の切れるロッコ (ベルモンド)。
その上を行くのがロッコの女、ペパ。
トレーラー盗んだロッコを追跡する、実はドン臭いマレック (ヴァンチュラ)。
彼の相棒でミステリアスな新人スタイナー。
そして、オンナ大好き!しゃべるの大好き!のミチミチ (ベルナール・ブリエ)。この映画はこのミチミチの存在がなかったら、かなりショボい作品になってたと思われるくらい重要キャラです。
出典・Gaumont
愛すべきキャラ「ミチミチ」
運送会社社長カスタリアーノはワンマンなイヤな奴。
「うちの会社はね、運転手もパトロンもない。大きな “家族” なのさ。うちはゴタゴタもないし、ストもない。組合なんて知らないね。運転手が休暇や給料値上げを希望してオレのとこにくるだろ?そしたらオレはそいつの話を聞いてやって、クビにするのさ」なんてことを平気で言います。
彼は今回、武器の密輸送を請け負います。そのために新しいピカピカのトレーラーを用意し、ガタイのしっかりした運転手スタイナーを臨時に雇います。
他の古株運転手のロッコやマレックたちは、新品トレーラーを運転したかったのにガッカリ。しかしこのスタイナー、偽物の身分証なんか持ってて怪しいやつなんです…
フランスのトラック運転手の飲み会はこんなんかな~と妙に納得させられる、スタイナーの歓迎会の場面。(と言っても仏流なのでスタイナーが皆におごります) ココでまず一発、ミチミチが飲み屋のトイレで笑かしてくれます。
翌日の朝6時、スタイナーは新品トレーラーで予定どおり会社を出発。しかし!運転してたのは実はロッコ。
彼がトレーラーを盗み逃走していることが分かり、社長は激怒。まず容赦無くスタイナーをクビにし (無茶な…)、マレックを呼び出して金の交渉をした後、ロッコ追跡を命令。
マレックは急いでトラックを出し、途中の道端で立っていたスタイナーを相棒に乗せて、女と一緒に逃走するロッコの後を追います。
ここからはロッコとマレックの戦いです。
単に追っかけごっこの映画ではありません。色んな小話や出来事をうまく盛り込んでいて、どちらかと言うと、その挿入話を味わう作品。
砂漠と山岳地帯の道中にある、長距離トラック御用達のレストラン兼給油所は、みんな顔なじみ。先を行くロッコはその休憩所で、マレックがホモセクシュアルだと噂を流し、マレックに給油しないようにと根回し。
砂漠地帯ではマレックの車両が砂にはまり込んで身動きがとれなくなったり、山岳地帯ではロッコにハメられてエンジンが故障したりと、やられっぱなしのマレック。
でもそんな時にはいつも、可笑しな音楽と共にミチミチが登場し、助けてくれます。このミチミチ、おしゃべりなのでずっと何かしら喋ってるのですが、「フィンランド美女との武勇伝」のクダリは、この作品のカルト的場面。笑えます。
その他にも、いろんな小ネタが随所に盛り込まれています。ガタイがデカイだけであんまし頼りにならないスタイナーの身分も、当時の北アフリカの情勢をかませて、ちゃんと明らかになります。
結局、マレックはロッコに逃げ切られます。(ドンくさい… )
そして最終目的地、ムソラの街のクラブで (もちろんココでもミチミチの存在が光ります) 、女に囲まれてるロッコを偶然発見。ついに二人は殴り合いになり…
骨格のストーリーよりも、随所に挿入される小話をメインに楽しむ作品ですが、やっぱり本筋の結末は言いません。それは観てのおたのしみに!