2008年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した映画。
舞台はパリ20区のとある中学校の1クラス。移民問題をはじめ、様々な問題を抱える生徒と、その担任教師の格闘を描きます。
クラスをまとめる難しさは日本でも色々と話題にはなるけれど、フランスも同じです。移民が多いということで、その問題は日本とはまた違った面もありますが、「言う事を聞かない生徒、問題を起こす生徒」がいるというのは一緒。
原作の書籍がベストセラーになっていたので、ずっと気になっていたこの作品。ついに映画で鑑賞したので、そのレビューです。
『パリ20区、ぼくたちのクラス』 原題 Entre les murs 原作 フランソワ・ベゴドー 監督 ロラン・コンテ 出演 フランソワ・ベゴドー 上映時間 118分 ジャンル ドラマ
あらすじ
フランソワは中学2年を担当するフランス語の教師。(フランス教育の第4学年は日本の中学2年にあたる)彼の務める中学校はパリ20区にあり、問題のある生徒が多いことで有名。フランソワは、その難しい生徒たちがいるクラスを担当。生徒らと直に向き合って授業を進め、彼らを励まし導く。
感想
この映画のクラスは13歳くらいの生徒たち。まだまだ子供で、知らない言葉もいっぱい。おまけに問題のある生徒が多いのです。先生に反発するなんて当たり前で、揚げ足とったり、タメ口きいたりは当たり前。
そんな生徒相手に、保守的でアカデミックな形式に囚われることなく、独創的で柔軟性のある教育方針をとるフランソワ。教育者として、妥協することなく全力を注ぎます。
移民が多いということで、生徒の持つ問題も様々。親が全くフランス語が喋れないなんて事も珍しくなく、最悪は不法滞在である場合も。彼らは子供のうちから、自分がどこの出身であるかという、アイデンティティを意識することを余儀なくされます。そういった子供たちの難しい現実を、繊細に描き出します。
実はこの作品、「ひとりの教師が、問題ある生徒たちをどう導いていったか」というテーマで、ドキュメンタリーぽく仕上げられています。映画と思って観はじめたので、ちょっとガッカリした感はありました。生徒たちも役者としてトレーニングされた子ではなく、数回の演技セミナーを受けたの実際の中学生たち。現実のクラスの雰囲気に近いものを作り出すためだったのでしょうが、中途半端な空気が出てしまっているように感じました。
それでも、作品には常に新鮮な空気が漂っていて、感動的な場面あり、ちょっと可笑しい場面あり、そんなんしていいんか⁈ という場面あり。先生の対処方にも型破りな面があって、なんだかんだと最後まで観るのをやめられなかった、不思議な作品です。
先生役をしたフランソワ・ベゴドーは、教師の経験があり、かつ原作者。なのでストーリーは無理なところも不自然なところもなく、本当に良く書けています。話の流れるテンポもよいです。でももしかしたら、彼の書籍で鑑賞したら、もっと自然体で楽しめる作品なのかもと思いました。