フランス映画【3人の逃亡者/銀行ギャングは天使をつれて】
みなさん、こんにちは。今日はフランス映画【3人の逃亡者】です。
監督ヴェベール自身がアメリカ版でリメイクしたものもありますが、今回はそのオリジナルでフランス版の感想です。
俳優ピエール・リシャールの笑いは「天然ボケ」を表現したものが多いのですが、ドゥパルデュが妙に冷めた演技をするので、その対比がかなり面白くて、あっという間の1時間半でした。
お笑い役者の色だけが前面に出て、つい単調になりがちなコメディ作品を、テンポ感もストーリー性も演出も文句なく揃った質の良いコメディ。
作品情報
【3人の逃亡者/銀行ギャングは天使を連れて】 原題 « Les Fugitifs » 監督 /脚本 フランシス・ヴェベール 出演 ピエール・リシャール ジェラール・ドゥパルデュ 公開年 1986年 上映時間 86分 ジャンル コメディ
あらすじ
5年の刑期を終え出所したばかりのプロの銀行強盗ジャン・リュカ (ドゥパルデュ)。新しい人生を歩もうと、銀行口座を開きに銀行へ向かう。
リュカが窓口で手続きをしていると、そこへ失業を苦に銀行強盗を決意したド素人強盗のフランソワ・ピニョン (ピエール・リシャール) が乗り込んでくる。
ピニョンはお金の入った袋と(素人なので大した金額は盗めていない)、そこに居合わせた大強盗リュカを人質にとって、逃走しようとする。銀行はあっという間に警察に包囲され、警察はもちろんリュカの犯行だと思い込む。
銀行からの逃走中、ピニョンは間違ってリュカの脚を撃ち、急いで知り合いのアル中「獣医」の家にリュカを運び込む。
ピニョンはリュカに、全ては自分の幼い娘ジャンヌのためにやったと打ち明ける。ジャンヌは母親の失踪以来、言葉を一言も発さなくなっていたのだ。
最初はピニョン父娘を全く助ける気もなかったリュカ。しかし、ジャンヌが徐々に懐いてくると、この父娘を放っておけなくなり、2人がイタリアへ逃走する手助けをすることに…
感想
フランシス・ヴェベール/ピエール・リシャール / ジェラール・ドゥパルデュのトリオ3作目。
他2作は « La Chèvre » « Les Compères »。個人的にはこの3作目が一番好きです。
『奇人たちの晩餐会』に代表されるヴェベール作品の、ボケキャラで名高い登場人物 «フランソワ・ピニョン» 。
今回のピエール・リシャール演じるピニョンは、失業者でウツ傾向があり、幼い娘の養育のために、ド素人な銀行強盗を働く父親。
そんなピニョンとは対照的なのが、プロ銀行強盗リュカ。エネルギッシュで大胆で、ある意味たよりになる力強い存在。鈍臭いピニョンを冷たく突き放したいのにできない、根は情深いやつ。
コメディ作品は下手すると、笑いをとる主演俳優の一人芝居になりがち。でもここは、2枚目じゃないけど演技すると格好いい俳優、ドゥパルデュの存在感が光ります。
作品を単調なコメディにしてしまわない様、笑いの温度を上手くコントロールしていました。ドゥパルデュ、いい俳優です。
シナリオもよくできていて、中だるみは無し。
何よりも、笑いのサジ加減が完璧。観客をウンザリさせず、さっと笑って、すぐにストーリーに没頭できる、軽快なテンポ感が良。
何度見ても笑える場面が3つあります。銀行でピニョンがリュカを人質に選ぶ場面、誤って銃負傷させたリュカを「獣医」に連れて行く場面 (この獣医がまた面白い)、ピニョンを女装させて道中の検問を通過する場面。
そして心がキュッとなる場面がひとつ。心を病んで失語していたジャンヌが、リュカに向かって初めて言葉を発する場面。このジャンヌ役の子役がまたえらい演技派で、可憐な動作や完璧なまでに無感情な表情でもって、作品に独特な色を与えていました。
お腹を抱えて笑う系コメディではないけれど、バカバカしさにシラケることなく、でも確実に笑える作品。ポッ❤️と心温まりたい時にオススメ。