フランス映画【恐怖の報酬(1953年)】あらすじ感想/ロードムービーのカルト作

みなさん、こんにちは。

今日は仏映画、クルーゾの名作【恐怖の報酬】の紹介です。

 

白黒作品がとても苦手というなら、前半部分が少々しんどいかもしれませんが、それでも我慢して観てソンはないフィルムです。

後半に入るともう最後までノンストップで観れます。ハラハラどきどき、あっという間の2時間半。

カンヌ国際映画祭パルムドール、ベルリン金熊賞受賞。

 

作品情報

【恐怖の報酬】
Le Salaire de la Peur

監督 アンリ-ジョルジュ・クルーゾ
脚本 アンリ-ジョルジュ・クルーゾ
出演 イヴ・モンタン
          シャルル・ヴァネル

公開年  1953
上映時間 141
ジャンル ドラマ・アドヴェンチャー

あらすじ

1952年、中央アメリカの片田舎の町ラス・ピエドラス。失業・貧困が蔓延する荒れた街で、職のない外国人たちが流れつくところでもあった。

ある日、街から500キロはなれた油田で大火災が起こる。米国石油会社のビル・オブライエンは、この火災を消し止めるために、400キロのニトログリセリンをトラックで現場まで運ぶことを決定。運搬に成功した場合の2000ドルの報奨金を提示し、運転手を4人募る。

最終的にマリオ(イヴ・モンタン)・ジョー(シャルル・ヴァネル)組と、ルイージ・ビンバ組がトラックを運転することとなった。

彼らは爆薬を積んだ2台のトラックに分かれて乗り込み、それぞれ目的地へ向かって出発する。しかし道中は整備されていない悪路ばかりで、道を塞ぐ大きな岩や石油溜まりがあったりと障害が待ち受ける。

感想

かなり魅せる作品です。

トラックでニトログリセリンを運ぶロードムービー面が有名な作品ですが、実際その場面が始まるのは作品後半から。つまり前半は、ラス・ピエドラスの街の荒んだ様子と、そこに集う人々の人間・社会模様が1時間ちかく刻々と描かれます。

アメリカ資本主義による南米への天然資源開発にまつわる様を視点に、街の住民がどのような状況に置かれているのか語られます。(ある意味アメリカ批判ともとらえられたため、作品の海外公開当時は、この前半部の数ヶ所がカットされていました。)

前半部は長いですが、辛抱してじっくり味わうことをお勧めします。後半部を数倍深く堪能することができます。

貧困から少しでも抜け出すために、どんなに危険な仕事でも請け負う。恐怖を目の当たりにして人間が変わる。社会的背景、人間関係、人間心理、いろんな面において全てが丁寧に描かれています。

登場人物もキャラがしっかり確立しているので観ていて飽きません。脚本演出もすばらしいです。「この人たちドコかで死んじゃうんやろな…」と何気に分かっているのに、その瞬間にはスキをつかれたかの様にビックリしてしまうのです。

始めから最後まで、ホコリっぽくて男臭くて、色んな意味で汚なくて、清潔感の全くない作品ですが、骨格のしっかりした本当に良くできた作品だと思います。

おまけ

・撮影は1951年、南フランスのニーム近郊で行われました。ラテンアメリカ風の町をセットしたようです。ニセの家々にニセの墓地  思えば確かに、ラテンアメリカ風というよりは何気にフランス臭い風景でしたね。

・撮影はすべり出だしが良くなかったようです。というのも撮影1週目にして、機材運搬を手伝ってくれた軍人2人が溺死。そして、バーで働くリンダ役をした監督の妻ベラ・クルーゾが病気でたおれ、撮影は数週間延期。撮影再開をしたと思ったら、暴風雨によって撮影セットが破壊されます。のちにイヴ・モンタンは「こんなに色々と問題のおこる撮影は初めてだった」ともらしたそうです。

・最初は、ジョー役にジャン・ギャバンが予定されていました。しかしギャバンは、卑怯者の役は自分のキャリアにとっては望ましくないと判断。代わりにシャルル・ヴァネルが採用されることになります。

・当時イヴ・モンタンの新妻はシモーニュ・シニョレ。彼女は彼とはなれ離れになるのに耐えられず、数ヶ月もの間、カマルグの撮影現場にくっついて来ていたそう。途中で自分の出演する映画『肉体の冠』の撮影のためにパリに戻ることになるのですが、モンタンの側から離れるのが辛くて、それはそれは大変だったそうです。

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