ドロン、ギャバン、ヴァンチュラが顔を揃えるとなったら、ヒットしないわけがないですね。
それに、後にも先にも、3人まとめて観れるのはこれっきりです。
ちなみにドロンとギャバンは『地下室のメロディ』以来2度目の共演で、このあと『暗黒街のふたり』で最後の共演をしています。
Table des matière
作品情報
【シシリアン】
原題 "Le clan des siciliens"
監督 アンリ・ヴェルヌイユ
音楽 エンニオ・モリコーネ
出演 ジャン・ギャバン
アラン・ドロン
リノ・ヴァンチュラ
公開年 1969 年
上映時間 117 分
ジャンル 刑事・犯罪
あらすじ
サルテ(ドロン)は宝石強盗で2人警官を殺した件でつかまり、裁判所につれて来られる。そこで警護に成りすましていた共謀者から小型の電気ノコギリをこっそり渡してもらい、囚人護送車で移動中に個室の床を切って脱出に成功する。
すべてはシチリアマフィアの一族の長、ヴィトリオ・マナレーズ(ギャバン)が指揮したもの。
サルテはヴィトリオに、ローマの宝石展示会場から宝石を強奪する計画を提案。ヴィトリオはN.Yにいる旧友で防犯システムのプロ、トニーに計画を打診。トニーは宝石会場からの強奪は不可能と判断。
そのかわり、次の展示会場へ向かう宝石をのせた飛行機をねらうことを提案し、計画実行のため知り合いのパイロットをヴィトリオの元へ送り込む。
そして彼らをルゴルフ警視(ヴァンチュラ)が追う…
感想
全体にしっかりした骨組みです。オーギュスト・ルブランの作品が原作で、うまく映画に仕上げてます
だいたい映画のアクション場面で、「そんなはずないやろ !」て少しでも思う場面があると、私は一気に熱が冷めて作品評価ブー👎対象となってしまいます。
なのでこの映画の、宝石を積んだ飛行機を高速道路に着陸させる場面には落胆させられないか心配したのですが、十分に許容範囲内でした。よかった。
ハイジャック時の機内の様子も、計画が綿密であることがしっかりと描かれていて、突っ込むスキが無いようにできていました。私の好きなリノ様が出てるからひいき目でしょうかね。
そのヴァンチュラ。2人の人気俳優に挟まれて、しょぼい位置づけになったらどうしようかと気がかりでしたが、さすがギャバンにも認められた才能の持ち主。
サルテ (ドロン)を追いかけ回す、いや、サルテに振り回される警視の役をうまくこなしてました。せっかく禁煙に挑戦してたのに、サルテに先を越されてイライラして吸いはじめちゃったり。
そのイライラ具合がちゃんと伝わって来る。ギャバンと1対1の会話の場面でも、落ち着いたベテラン警視のいい雰囲気をかもし出してました。
この作品の前半は、サルテの囚人護送車からの逃走にはじまり、ヴィトリオと組んで宝石を乗せた飛行機を襲う、ドキドキ連発のアクションもの。いろんなところに、手に汗をにぎる仕掛けが盛り込まれてます。でも話はこれだけでは終わりません。
途中、”サルテがヴィトリオの息子の嫁とキスしたところを、運悪くヴィトリオの孫に見られる” という場面があります。これが後半テーマの前振りで、ここから結末へ向けて、物語の視点がアクションからファミリーへと移ります。
この後半部分がまた何とも良い出来でした。前半よりもストーリーが心に訴えかけます。無垢な子供の一言が、最終的にファミリーを解体へとみちびき、死人を出してしまう。そして当の子供はというと、映画の最後の最後まで無垢なのです。ある意味、子供って残酷。そんなことを思いながら、作品を観終えました。
そして印象に残る良い音楽の映画は、作品自体も良くできてることが多い気がします。この映画の音楽もほんとにすばらしいです。
テーマのメロディは短調、半音階で下降してゆくというシンプルなもの。そこへビヨ〜ンビヨ〜ンと介入してくる、ちょっとふざけて聞こえる口琴 (guimbarde) の音。ミスマッチのようでマッチしていて、なんとも言えない郷愁をさそいます。
作曲家モリコーネはヴィトリオとルゴフ警視にライトモチーフも採用しています。ライトモチーフとは、作曲家ワグナーの演劇での作曲技法といわれ、一定の動機 (テーマ)を特定の人物や出来事などに関連づけて展開する方法です。この映画にも効果的に用いられています。
映画と音楽ってほんと切っても切れない関係ですね。