【影の軍隊】レジスタンス映画のおすすめ傑作。超クールなヴァンチュラ観るならコレ!

映画《影の軍隊》

舞台は第二次世界大戦、ドイツ占領下のフランス。

レジスタンスたちがどのように生きたか。アッというまの140分。すごく暗い映画だけど、ものすっごく心に残ります。

観客を意図的に感動させるという単純な構成ではなく、自然と観客自身に問いと感動を見出させるフィルム。レジスタンスの活動よりも、彼ら自身の生き様が描かれています。

特にリノ・ヴァンチュラの演技は最高です。

《影の軍隊》

原題 L’armée des ombres

監督 ジャン-ピエール・メルヴィル
原作 ジョゼフ・ケッセル

出演(役) リノ・ヴァンチュラ 
     シモーヌ・シニョレ 
     ポール・ムリッス 
     ジャン-ピエール・カッセル 
     ポール・クロシェ 

公開年  1969 年
上映時間  139 分
製作国  フランス・イタリア
ジャンル ドラマ・戦争
言語   日本語版あり
スポンサーリンク

まめ知識

この映画を観るにあたり、知っておいた方が理解しやすいと思われる、戦時中フランスのバックグラウンドをごく簡単に説明しておきます。知ってる方は跳ばしてください。

対戦中1940〜1944年までフランスはドイツ占領下にあります。その時フランス人の間では、対ドイツに関して「ドイツに協力する派」「ドイツに抵抗する派」がありました。

ドイツ協力派は、当時のフランス政府『ヴィシー政権』。トップは長老フィリップ・ペタン。そのペタンを支持する人をペタニスト呼びます。

ドイツ抵抗派は、軍人シャルル・ド・ゴール 、そして民間にできていたレジスタンスたち。ドゴールは息子の名前をフィリップと名付けるほどペタンと仲が良かったのですが、対ドイツ観でペタンと対立ロンドンに亡命して自由フランス政府を立ち上げます。そして、同じ対ドイツ抗戦派のレジスタンスたちを支持し組織化。後にフランス解放の英雄としてパリに帰還します。そのドゴールを支持する人をゴーリストと呼びます。

あらすじ

1942年ドイツ占領下のフランス。道路技師フィリップ・ジェルビエ(ヴァンチュラ)は、レジスタンスのグループリーダー。

”ドゴール思想”の疑いでヴィシー政権の警察につかまり、フランス当局によってパリのゲシュタポに身柄を引き渡された。彼はスキをみてそこから逃げ出す。そのままマルセイユに下り、仲間たちと一緒に、彼を密告した若者ドワノを処刑する。

ジェルビエの右腕フェリックス(ポール・クロシェ)。フェリックスの空軍隊時代の元同僚ジャン・フランソワ(カッセル)。J・フランソワの兄でレジスタンス大ボスのリュック・ジャルディ(ポール・ムリッス)。旦那と娘持ちのマチルド(シモーヌ・シニョレ)。そしてルビゾンルマスク。計7名のレジスタンス活動家たちの運命を描いた作品。

感想

暗い暗い、むちゃくちゃ暗い映画です。だけど刺さります。観終わったあと気付くと、心にグサグサと色んなものが刺さってました。観てる間は気づかなかったんですが…

孤独、友情、非人道、死、アイデンティティ。レジスタンスフィルムの最高峰です。

 

この映画を観る前は、レジスタンスが具体的にどういう活動をして、どんな作戦を練っていたとか、もう少しアクション的な仕上がりを勝手に想像していました。結果としては、チーム仲間内がどう機能していたかを、心理面から探る要素の濃い作品だったのです。

仲間を裏切ったら、若くても家庭持ちでも冷徹に処刑。それは残ってるレジスタンスを守るため。仲間が捕まったら命がけで助けに行く。

 

全体的にものすごく淡白に描かれています。ストーリーは、密告者、危機一髪の脱走劇、拷問、友情と、ドラマチックな要素満載にもかかわらず、演出が淡々としているんです。

会話やシーンにおいて、ものの見方や感情を一方的にこっちに押し付けてきません。レジスタンスが英雄的であるとか、愛国精神だとかの描写は一切なし。監督メルヴィルがレジスタンスであったにもかかわらずです。

 

ドイツ側の将校の名前も全くでてこない。基本の7人以外は無役名で通しています。女レジスタンスのマチルドがリュシー・オブラックだとか、ジャルディがジャン・ムーラン的だと、実在した誰がモデルなのか、部分的に想像できるようにはなっていますが、それも暗にです。基本的に余計な情報はほり込まれてません。

 

そんなウス暗くてニュートラルな作品なのですが、いい具合に心に響く要素が入っています。

例えば、散髪屋のペタニストおじさん。ゲシュタポから逃げ出してきたジェルビエが、レジスタンスだと分かっていながら、彼が逃げきれるように上着を交換してあげる場面は、地味に胸が熱くなります。

拷問されている旧友フェリックスの元に行くため、自らゲシュタポに捕まるジャン・フランソワの話もそう。彼は一個だけ持って来た自殺用の薬を、まだいくつか持ってるからと言って、苦しむフェリックスにあげてしまいます。とても切ない場面です。

これら胸打つ場面も相変わらずサラっと演出されています。お涙チョウダイにするとウッ陶しい。でもこの要素がなきゃ映画でなくレポートになってしまう。そこのバランスを上手くとっていると思います。

 

そうそう、俳優陣も忘れてはいけません。何回も言いますが、リノ・ヴァンチュラは最高です。特にこの作品でのヴァンチュラは、今まで以上の圧倒的な存在感を放ってます。

助演俳優として有名なポール・クロシェ(フェリックス役)も素晴らしい!この人が脇に出てくる作品は観てて安心感があります。

監督メルヴィルはこの映画の撮影中、全然ヴァンチュラに話しかけなかったそうです。他の何人かの俳優にもアシスタントを通して話していたそう…。そんな変な撮影環境で、よくこんな素晴らしい演技ができたもんだとほんと感心です。

ネタバレ注意

原作はジョゼフ・ケッセル。この作品を出したのは1943年。ケッセルは当時、ド・ゴールの自由フランスのあったロンドンに行きます。そこで実際に任務を遂行するレジスタンスたちに会ってレポートをとり、この本を書き上げます。

監督メルヴィルはケッセルの原作をほぼ忠実に映画化したようですが、映画の一番最後はメルヴィルのアイデアでした。

最後まで生き残っていた4人 (ジェルビエ、ジャルディ、ルビゾン、ルマスク) が最終的にどのように死んでいったかの追記が流れる部分、ここをメルヴィルは付け加えました。実話フィルムでよく見る手法ですね。

ですが、この付け加えに関しては、映画ファンの間では賛否両論のようです。確かにリポート要素の強い作品ではありますが、やっぱりお話です。追記される内容も、メンバー全滅のお知らせ。

私も余計なことしたよなぁ…とちょっと感じました。ここで一気に、作品にチャチな感じが出てしまったように思います。でも原作者ケッセルは、このオマケ部分で感極まって泣き出したとかいう話なんで、付け加えて正解だったのでしょうね。みなさんはどう思われましたか?