みなさん、こんにちは。
今日はフラ映画【北ホテル】のレビューです。
「天井桟敷の人々」で有名な監督、マルセル・カルネの作品【北ホテル】。
この寂れたタイトルがとても有名で、ずっと前から観たかった映画ですが、
いつも誰かにジャマをされては、観る機会を逃してきた作品でもあります。
今回、やっと観ました♪
Table des matière
作品情報
【北ホテル】 原題 « Hôtel du Nord » 監督 マルセル・カルネ 出演 アナベラ アルレッティ ルイ・ジュヴェ ジョンピエール・オーモン 公開年 1938年 上映時間 95分/白黒 ジャンル ドラマ
あらすじ
パリのサンマルタン運河沿いの安ホテル。その食堂では、ホテルの客やオーナーたちが賑やかにテーブルを囲み、初聖体を祝う夕食をとっていた。そこへ1組の若い男女が、宿泊部屋を求めてホテルへやって来た。
夜中、一発の銃声が鳴り響く。若いカップルのピエールとルネが、心中を図ろうとしたのだ。銃声を聞きつけた隣人エドモンが、扉を破って部屋に押し入る。彼女を先に撃ったものの、後を追いきれないピエールは、ホテルから逃走する。
ルネは無事に一命を取り止め、退院後は心新たに北ホテルで働き始める。一方、ピエールは刑務所に入る。そして、訳ありエドモンはルネに惹かれ始め…
感想
画家ピエールと孤児院育ちルネの、若い恋愛話かと思えば、実はゴロツキ出身エドモンと、安娼婦レイモンドが、ものすっごく重要な位置をしめる作品。
エドモンの、強そうに見えて実は心に傷を負っている、あの複雑な雰囲気が、もう絶妙。恐るべし俳優ルイ・ジュヴェです。
娼婦レイモンド役のアルレッティも、この作品を機に売れ出しただけあって、安定した説得力のある演技を見せてくれます。
そして個人的にドツボだったのは、本作で映画デビューした、水門係を演じるベルナール・ブリエ。主役俳優ではないけど、脇に持ってきたら確実に作品を支えてくれる逸材で、本作品以後、素晴らしいキャリアを築いた俳優です。
同年にカルネは「霧の波止場」も出しています。もし、どちらを観ようかと迷っているならば、ジャン・ギャバン主演の「霧の波止場」をすすめるかな… 食いつきやすいです。
「北ホテル」だって、テンポが鈍いわけでもないし、俳優陣は非常に魅力的だし、悪い出来ではありません。でも何ぶん、ケチャップやマヨネーズの濃い展開に慣れている現代人には、ちょっと薄味なのは否めません。でも決して薄味が悪いのではなくて、ちょっと観方を変える必要があるということですね。
個人的な意見ですが、映画って、主観的に味わう作品と、客観的に味わう作品があると思います。本作品は後者。そして、どちらにおいても、最後まで集中力を維持できてる作品が、いわゆる名作だと思います。
「北ホテル」は、空気を読む必要のあるオトナな作品です。(といってもカルネ32歳の作品なのが驚きなのですが!) パリ下町のいろんな人間模様が描かれていて、ヤクザな過去を持つ人、娼婦、孤児院育ち、ホモセクシュエル、人種差別な警官、人間関係、言葉、愛、人生について… そんなテーマを、すでに何度も自問したことのある世代の人に響く、渋い作品だと思いました。