ハマると中毒性のある、ゴダールの代表作の1つ『軽蔑』。

男と女のカップル破綻にいたる様子がノンビリと描かれています。

映画を哲学的に観れる人、単純に美人女優やブリジット・バルドーが好きな人にはおすすめ。

    《軽蔑》
原題  « Le mépris »
監督  ジャン-リュック・ゴダール
出演    ブリジット・バルドー 
    ミシェル・ピコリ 
    ジャック・パランス  
公開年  1963年
上映時間 102分
ジャンル ドラマ

あらすじ

物書きのポール(ピコリ)は妻カミーユ(バルドー)と幸せな生活を送っている。

ある日、アメリカ人映画プロデューサーのジェレミー(パランス)が、ポールに映画の脚本手直しの仕事を持ちかける。その映画とは、監督フリッツ・ラングによって製作中の『オデュセイア』。

ポールは仕事を受けるか決めがてら、カミーユと共に映画の撮影チームに合流。ほどなくジェレミーは、ポールの目前でカミーユに接近。そこから2人の夫婦関係が危うくなり始め…

感想 (結末バレ)

話と画面の進みが遅くてダルイ。音楽の音量も役者の会話に対して大きすぎて疲れる。カップル関係が崩れて行く様をダラダラと描写。ほんと、この手のフランス映画って好きじゃないと観てられない!という類の映画です。個人的には、ゴダール好き?ときかれればキライと答えます。

なのに、この作品は、もう何回も観てるのです。観るたびに「やっぱつまらん」と思うのに、また観てる。バルドーのイケズっぽい顔が好きで観てしまうのもあるけれど、再鑑賞してしまう理由は別にあると思います。

おそらく、メランコリックな何とも言えない作風のせい。《気狂いピエロ》もそうですが、この作品にはヒミツがあると勝手に信じてそれを解こうとして観てしまう、変な作用のある映画なのです。ストーリーはとても単純。カミーユポールの関係がうまく行かなくなってゆくだけ。

彼女はある時から突然ポールへの愛を疑い始め、ついにはアンタを軽蔑してると言い放つまでに。彼女はポールに手紙を残して、ジェレミーの元へ去ってゆきます。そして最後、カミーユとジェレミーは車事故で死亡します。

この3人の成り行きを、オデュセイアの話と絡ませていきます。

カミーユのポールへの軽蔑はどこから来たのか。そのヒントを、映画オデュセイアを製作中の監督フリッツ・ラングとポールとの会話でふります。ユリシーズはポール、ペネロープはカミーユ、ポセイドンはジェレミーと重ねてあります。

 

なぜユリシーズ(オデュセウス)はトロイの遠征後から、美人妻ペネロープの元に戻って来るまでに10年も費やしたのか… それは彼らの関係は遠征前から悪くて、家にちゃっちゃと帰りたくなかったから。

ユリシーズは美人妻ペネロープに言い寄って来る男たちを、最初はカッコつけて追い払わなかった…  ポールが妻カミーユに近寄るジェレミーを追い払わず、逆にその関係を僕の仕事のために上手く使ってくれと後押しするかのように。

ユリシーズの「ペネロープのことよりまず自分」て態度が、彼女の心を彼から引き離していった… カミーユがポールから離れようとしているように。そして、なんとかペネロープの元に戻ろうとするユリシーズの邪魔をするのがポセイドン

というような解釈が多いようです。

 

私は単純に、彼女を愛する「確固たる自分」ってものを持っていなかったポールに対し、カミーユが愛想をつかしただけだとみます。最後のジェレミーとカミーユのクルマ事故も、とくに深い意味はなく、「死」を日常的に描写するのが好きなゴダールならでは。彼自身が、この作品は単純で謎なんてないと言うように、観て分かる範囲の単純なコトがこの作品のねらいだと思います。

ゴダールはなかなか詩的な脳ミソの持ち主なようです。本作では赤と黄と青が効果的に使われていますが、こういう妙に関係性をチラつかせる描写が「なんかもっと深い意味があるんじゃないだろうか」と感じさせるうまいトリック。このスタイルの完成形が《気狂いピエロ》です。

おまけ

ゴダールは当初、フランク・シナトラ/キム・ノヴァック組、伊プロデューサーはソフィア・ローレン/マルチェロ・マストロヤンニ組でやりたかったそう。

そして、かわいいバルドーの出演料は250万フラン ( 40万ユーロ= 約4800万円 ) で作品予算の半分を占めていました。 かたやゴダールは20万フラン (3万ユーロ= 約360万円 ) … 50年前の価値を考えると、彼女のこの額ってすごいですね。

それにバルドーのセクシー場面が少ないからと、後になって付け加えられた作品冒頭のシーンは有名です。本当は、彼女とパランス (ジェレミー役) との戯れも撮る予定だったのですが、バルドーがパランスと色恋シーン撮るなんて絶対イヤっと猛烈に拒否。代役たてる騒ぎになり、彼をムッとさせてしまいました。彼女は嫌悪感を抱くくらいパランスを嫌ってたそうです。

最新情報をチェック