ブールヴィルとルイ・ド・フュネスの最強デュオ、最期の作品。数あるフレンチコメディ名作中の名作です。
この作品を知らないフランス人はいないだろう、というくらい今でも人気。半世紀も前の作品だし古臭くて笑えないのでは?なんてコトはありません。何回観ても笑えます。
洗練されたタイプのクラシック作品ではありませんが、現代人の鑑賞に耐えます。
過ぎた時代を感じるとすれば、作品タイトルの日本語訳かな…
『大進撃』
原題 "La Grande Vadrouille"
監督 ジェラール・ウーリー
出演 ブールヴィル
ルイ・ド・フュネス
公開年 1966年
上映時間 132分
ジャンル コメディ
Table des matière
あらすじ
1942年ドイツ占領下のパリ。上空でイギリス空軍の飛行機がドイツに攻撃された。乗っていた英パイロットたちは、パラシュートで脱出。そのうち3人、ヒゲの隊長はヴァンセンヌ動物園に、ピーターは塗装屋の作業カーゴに、マッキントッシュはオペラ座の屋根に、それぞれ着陸。
ピーターは塗装屋オーギュスタンに、マッキントッシュは指揮者スタニスラスにお世話になる。この英人3人と仏人2人はドイツの追手から逃れるため、修道女や宿の女将にかくまってもらいながら、ドイツ占領下地域から自由地域圏をめざして移動する。
感想
ブールヴィルとルイ・ド・フュネスのコンビは最高!それぞれのソロ作品よりも、デュオの方がダントツ面白いです。ブールヴィルは、人の良さを出した控えめなボケキャラなので、印象の薄いところが。逆にルイ・ド・フュネスは、強烈にせわしなく騒々しいキャラなので、観てて途中で疲れてくる。そんな2人が共演すると、お互いの短所をうまく補い合いギャグにバリエーションができるので、飽きるということはありません。ギャグに途中で飽きないのは、コメディ鑑賞の際にはとても重要なポイントなので、このコンビは最高だと思います。
オーケストラ指揮者を演じるド・フュネス。彼の演技はパワフルで動きに特徴があります。小柄な身体を最大限に動かして、大げさな身振りを披露。アクの強い動きとも取れるのですが、顔の表情や身体の使い方がものすごく細かく、その細部による表現で観客を笑わせます。そのテクニックといったら、ほんとに一級品。しかし、この天才お笑い役者ド・フュネスは、Proximus の記事で 映画撮影中の「感じの悪い映画役者10人」に入ってしまってました。でも、コメディアンって私生活は意外と気難しいと耳にすることもあるし、あまり意外ではないかも。。。
対してブールヴィル。彼は本当に人の良さそうな感じが顔に滲み出ています。滑舌の良いフュネスに対して、少し舌ったらずな発声のブールヴィル。彼の天然ボケっぽい柔らかさが、観る者をホッとさせます。ギャグを放出しまくるタイプではないのですが、繊細な面白さをもった人。難しいフュネスをうまく操作していると思います。
そして、この作品には、印象的な場面がたくさんあります。オペラ座でのオーケストラの稽古、トルコ風呂での『Tea for Tow』メロディーによるランデブー、宿でのドイツ将校たちとのベッド騒動。挙げだしたらキリがありません。主演の2人だけでなく、助演のイギリス人3人も笑わせてくれますよ。
ドイツ占領下時代をテーマにした作品はいくつかありますが、その嬉しくない歴史事実をテーマに、ここまで面白おかしく人々を笑わせる作品がつくれるフランスのユーモアには脱帽です。シナリオがしっかりしているので、2時間があっと言う間でした。
おまけ
この映画の超有名シーンである、ブールヴィルがド・フュネスを肩車する場面。ここ、実は彼らのアドリブでした。こんなに印象的なシーンを作るとは、恐るべし役者たちです。
そしてもう一つ有名な、トラックの荷台から巨大カボチャをドイツの追手に向かって投げつける場面。このカボチャたち、生産シーズン外だったため畑から集めることができず、なんとパリの高級食料品店フォションに150個を注文したとか。投げてぶっ潰されていたのは、ものすっごい高価なカボチャたちだったそうです!