フランスギャング映画のカルト作【現金に手を出すな】あらすじ感想

フランス流ギャング映画の親玉作品。

ギャバンが俳優としてのキャリア再出発に成功し、ヴァンチュラが俳優人生を歩むことになったデビュー作。50年代のパリの文化背景が色濃く、時代を強く意識させる作品です。

原作は「フレンチギャング小説の親」と言われている、アルベール・シモナンの同名ベストセラー小説。仏語オリジナル版ではギャング用語が多用されており、フランス人にとっては渋い出来ばえの作品のよう。

のちにシモナンがセナリオ、オディアールが会話を担当した映画 ⟪Les Tontons flingueurs ⟫(日本語訳版なし、残念!) も、ギャング用語が満載で、本作品と共に、フランスでカルト的人気を博しています。

Table des matière

作品情報

【現金に手を出すな】
原題 ⟪ Touchez pas au grisbi ⟫
監督 ジャック・ベッケル
原作 アルベール・シモナン
出演   ジャン・ギャバン     
     ルネ・ダリ               
     リノ・ヴァンチュラ 
     ジャンヌ・モロー    
公開年  1954年
上映時間 94分
ジャンル ギャング・白黒

あらすじ

初老ギャングのマックス(ギャバン)と、リトン(ルネ・ダリ)は20年来の相棒。彼らはギャング引退前の最期の仕事にと、5000万フラン相当の金塊の盗み出しに成功したばかりだった。世間の事件への熱が冷めるまで、その金塊は隠しておく予定にしている。

しかし、元来オッチョコチョイのリトンは、金塊の話を愛人ジョジィ(モロー)に話してしまう。ジョジィは別のギャングのボス、アンジェロ(ヴァンチュラ)の女でもあったので、情報はもちろんアンジェロの耳に。アンジェロはその金塊を横取りしようと企む。そしてリトンは、自分のヘマを拭おうとアンジェロの元に単独乗り込むが、逆に拉致されてしまう。

拉致された長年の相棒を放っておけないマックスは、アンジェロの要求「金塊とリトンとの交換」を受け入れる。その交換のランデブー現場では、金塊はアンジェロに引き渡され、無事にリトンがチームに戻って来た。受け取った金塊を車に積み、大人しく立ち去ったように見えたアンジェロ組だったが…

感想

この作品が特別に有名なのは、ギャバンとヴァンチュラ、各々にとっての成功作だったからだと思います。

ギャバンは第2次対戦中アメリカに移住し、戦争の後半には自由フランス海軍にも参加しました。そして戦後はフランスに戻って俳優活動を再開するのですが、復帰はそう簡単ではなかったのです。長く映画界を留守にしていた間に、新しい若手の俳優が現れていたこと、そして彼自身、軍隊経験からすっかり老け込んでしまっていたのです。

その後ギャバンは、俳優界における自分の立ち位置とキャラを模索する時期が長く続きました。そんな背景から完全復帰したのが、本作です。「説得力ある存在感、威厳、人情」といった、彼独自のキャラを確立し、ここからギャングものにギャバンは欠かせなくなります。

もうひとり、この作品で成功したのがリノ・ヴァンチュラで、彼のデビュー作でした。これまで彼はレスリングが本職のスポーツマンだったのですが、怪我をして引退。偶然この作品に出演するチャンスがあり、やってみたら当たったのです。ギャバンにも認められ、あれよあれよと言う間に大俳優になります。本作35歳くらいのデビューなので、この歳から大成するとは、ほんと才能があったんでしょうね。

フレンチギャング映画の典型と言われるこの作品ですが、ギャバンの演技がそれを確固たるものにしたと言えそうです。でも彼、この作品ではマッチョ炸裂で、美女どもの顔にバシバシ平手打ち食らわしてました… 紳士的ではないし、ちょっと時代を感じる点ではあります。

ヴァンチュラは少々演技がぎこちないのが見てとれますが、早くもギャバンに負けない存在感を放ってます。そしてギャングに華を添える女性たちも、美人ぞろいです。ジャンヌ・モローは初々しく、マリリン・バファードはそれはそれは美しい!でもまあ、彼女たちの衣装と髪型は、可笑しいくらい古臭かったですけどね。

2箇所ほどダラッとするパッセージがありますが、苦痛ではありません。全体的に、スムーズに楽しく鑑賞できます。白黒が観れる人、ギャングものが好きな人は、一度観てみてね。

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