みんさん、こんにちは。今回は食事の始まりにかける言葉『ボナペティ』のおはなしです。
「めしあがれ」や「さあ、いただきましょ」のつもりで、食べ始めに言う « Bon appétit »。
« appétit » とは “食欲” のことですが、なんとまあ、あまり礼儀正しくない表現なのだそうです。
そんなこととは知りませんでした…
ボナペティ!« Bon appétit » の真意
なぜ歓迎されない表現なのか。話は中世にさかのぼります。
当時フランス人たちはイギリス人との宴会の席で、彼らが食べ始めには何も言わないことに気づきます。
と同時にフランス人において、料理が芸術的なもの「アート」であり「楽しむもの」としてとらえられ始めると、食べることは「お腹を満たすこと」ではないという意識が出てきたのです。
そうして徐々に「ボナペティ」という表現は、実は不適切なのではないかと考えられ始めます。
なぜならこの « ボナペティ » という表現。
じつは « 胃での良い消化 » « 腸での良い経過 » を願う言葉で、あまり食欲をそそられない食事を前にしての « Bon courrage!» がんばれ!につながる表現だったからです。
そのため、生理的なことを露骨に連想させる « ボナペティ» は礼儀正しくない表現といわれるのです。
ではどうするのかというと、何も言わずに食べはじめます。
どうしても何かいいたいなら « Bonne dégustation !» ボンヌデギュスタスィオン!。
もしも誰かが「ボナペティ!」と言ったら、一緒になって同じことを言わず « Merci » « vous aussi » と返しておきます。
“ ボナペティは言わないよ” という話はチラホラ耳にしたことはありましたが、実際つかってる人もいるのであまり気にはしていませんでした。でも確かにごはん会の席では « Bon appétit » は口にしないことが多いです。
おかわりをすすめられて断るときも、日本語では「もう結構です、お腹いっぱいです」「たくさんよばれました」と言ったりしますが、この直訳にあたるフランス語表現を使うこともありません。
« Non merci, c’était très bon » 「結構です、とても美味しかったです」 と料理を褒めときます。”お腹が〜” とか “食べた〜” とか言いません。(もちろん家では「お腹いっぱい、食べ過ぎた!」と言います。)
彼らにとって食事は「アートである料理を楽しむ」が根底にあるため、「食べる」や「食欲」といった生理的・動物的な行為を連想させる表現はエレガントでないと考えるようです。
「美味しかった!いっぱい食べて、お腹いっぱい!」と言うことが幸せな私には、ちょっとさみしいものです。