フランス映画 【あるいは裏切りという名の犬】ふたりのポリスの確執

パリ警視庁のトップ警視2人によるイザコザを、実話をもとに描いた映画です。

監督自身が警視庁の元警視というから、ストーリーとカメラに迫力ある臨場感があり、観賞後の満足度は大。

以前、俳優ジャン・デュジャルダンの出演する映画で、本作の監督と警視時代の同僚であったマンクーゾの作品 «Contre-enquête» を紹介しました。あれはデュジャルダンを観る分には良かったけど、ポリス系映画としては軽い仕上がりでスカされてしまった感がありました。

それに対し、この映画は面白かった!ストーリーもきっちり練られており、ポリス好きの鑑賞にも十分耐えうる作品だと思います。

【あるいは裏切りという名の犬】
原題       « 36, quai des Orfèvres »

監督   オリヴィエ・マルシャル
出演(役)  ダニエル・オトゥイユ
     ジェラール・ドゥパルデュ
     フランシス・ルノー
               アンドレ・ドュソリエ

上映時間 111分
公開年  2004年
ジャンル ドラマ・警察/犯罪

Table des matière

あらすじ

パリでは、ギャングによる凶悪な強盗事件が頻発していた。パリ警視庁長官のマンシーニは部下の副官2人に、この事件の主犯ギャングを押さえた者を、自分の後継にする意向を明らかにする。その副官2人とは« BRI » 捜査介入部隊トップのレオと、« BRB » 強盗鎮圧部隊トップのドゥニ。ここから、元友人同士であった2人の緊張は急激に高まる。

感想

大物ポリス2人の衝突と、警視庁内部の闇。これが実話を基にしているというのだから驚きです。こんなドラマチックなことが、パリの警視庁で起こったとはね。

監督マルシャルは警視庁の元警視なので、リアリティは違和感なく表現されています。ただ、アクション場面を始め、全体的にアメリカンな味付けにはなっているなとは思いました。乗りとテンポがやたらに良いのです。大味な出来とも言えますが、幸い安っぽい感じはしません。あっと言う間に、物語の中に引き込まれていきます。

 

主演俳優は、いわゆる2枚目俳優ではないのに演技してると猛烈にカッコよく見える、大俳優ドゥパルデュとオトゥイユ。ドゥパルデュに関しては言うまでも無いですが、オトゥイユがこれまた会心の演技で、ドゥパルデュと同等の存在感を放っていました。

ふたりは、心の方向性が全く異なるレオとドゥニを演じます。部下たちに慕われ、人情を大切に生きるレオ(オトゥイユ)。それに対して、部下には慕われず、権力欲と嫉妬の鬼ドゥニ(ドゥパルデュ)。この2人は過去には同じ女性を愛し、レオが勝ち取った経緯があります。

助演俳優たちも個性派が多く、特にレオの部下「ティティ」は良いキャラしてました。その彼がこの映画の大切なオチを導いてくれます。

 

以下ネタバレ注意

 

このストーリーのポイントは、心が歪みすぎたドゥニの存在です。彼は色んな意味で、自分より幸せなレオが憎ったらしくて、たまらない。レオを不幸にする事しか考えてません。

レオは自分の情報屋シリアンによって、殺人のアリバイ工作に使われてしまいます。それをドゥニに暴かれ、7年間の刑務所生活を送ることに。

レオが刑務所にいる間にも、ドゥニはレオ嫁を殺したり、ライバルをぶっ潰すために必死です。始終自分の保身に走り、小賢しい手回しをします。レオが可哀想というよりも、心が貧しすぎるドゥニが可哀想でたまりませんでした。

 

7年の刑期を終えて出所したレオは、ドゥニが自分の嫁を殺した事を突き止め、その復讐にでます。しかし最後の最後で、ドゥニを殺すのを思い止まります。黙って立ち去るレオに向かって、ドゥニは罵声を浴びせます。そこへ一台のバイクが現れて…!

とまあ、良く筋が組まれています。特に配役とシナリオに説得力があり、隙のないテンポ感が非常に心地よい作品でした。

おまけ

レオは出所してから、大きくなった自分の娘ロラに再会します。この娘役の女優さん、ダニエル・オトゥイユの実の娘です。

そして以下3つのシーンは実話でした。「上司にオシッコかける部下(作品内ではティティ)」「 バーでのネズミ撃ち競争」「退職同僚に道路から引っぱがしてきた « Quai des Orfèvres » の住所板を贈る」場面です。フランスのポリスって、けっこう野蛮だったんですねぇ。。。

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