知る人ぞ知る、
フランスの美しい村【ヴェズレー】。
ワインで名高いブルゴーニュ地方にある村で、サンチアゴ・デ・コンポステラ巡礼の出発地のひとつです。
以前に紹介したコンクよりもマイナーな村ですが、落ち着いた静けさが心地よい、中世の面影を残した村【ヴェズレー】を紹介します。
神秘のサント・マドレーヌ大聖堂を訪ねる。
パリから南東へ車で3時間ほど走ると、田舎の平たい風景の中に、ぽっこりとヴェズレーの丘が見えてきます。
ヴェズレーは「大聖堂と丘」として世界遺産に登録されているだけあって、遠目から眺める村と丘の稜線は、とても美しく印象的です。
この村の遺産は、丘の頂きに立つ「サント・マリ・マドレーヌ大聖堂」(La basilique Sainte-Marie-Madeleine) です。
この教会は9世紀にベネディクト会修道院の教会として建てられ、のちに修道士によって持ち込まれたマグダラのマリアの聖遺物によって、巡礼地として大変栄えました。
その後、教会は宗教戦争やフランス革命で破壊されて廃墟と化してしまいますが、19世紀に歴史遺産監督のメリメによってその価値を見出され、修復されます。
そして20世紀に入り、大聖堂がバジリック (バシリカ) の名になると、村は再び巡礼地としての活気を取り戻します。
ちなみにこの「バジリック」とは、聖人の墓や聖遺物を内部に抱えている特別なカテドラル (大聖堂) に対してローマ教皇が与える呼び名で、この場合はバシリカ様式の意味ではありません。
前室のタンパン
この大聖堂は、ロマネスク様式とゴシック様式が混ざったスタイルになっています。
聖堂に入ってすぐの前室には、その大きさに圧倒される、美しい彫刻が施された巨大なタンパンがあります。ロマネスク彫刻の傑作と言われ、イエスが12人の使徒らに宣教の命令を与える場面が描かれています。
そのタンパンをくぐると、ロマネスク・ビザンチン様式の装飾アーチを持った長い身廊があり、その一番奥には、光あふれるゴシック様式の内陣が見えます。
ロマネスクの温かく落ち着いた佇まいが、外からの光でほんのり照らされる様子は、ずっと見ていたくなるくらい心地の良いものでした。
身廊の柱頭にも手の込んだ彫刻が施されており、様々なキリスト教話の場面が語られます。
そして地下聖堂には、村の宝物であるマグダラのマリアの聖遺物が静かに納められています。
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この大聖堂の立つ方角は精密に計算されており、夏至の日に太陽が一番高くなる時刻になると、南の高窓から差し込む太陽光が、祭壇まで続く身廊のど真ん中に点々と光を落とすように設計されています。
大昔にこの教会を設計した人物が、天文学にみる神秘性を正確に表現する技量を持っていたと思うと、とても感慨深いものがあります。
美しい大聖堂なので「神秘」が好きな方は、ぜひ訪れてみてください。