フランスはノルマンディ地方にある、ジュミエージュ修道院跡に行ってきました。
ヴィクトル・ユゴーが「フランスで最も美しい廃墟」と称し、小説アルセーヌ・ルパン『カリオストロ伯爵夫人』の舞台になった場所でもあります。
一度見ると忘れられない、インパクトのある美しい遺跡でした。
帰りはルーアンに寄り道したので、合わせて少し紹介します。
美しい廃墟「ジュミエージュ修道院」
ジュミエージュは、パリから車で2時間半ほど。
公共交通機関でも行けなくはないですが、不便すぎるので車一択です。
高速道路を下りると、そこはセーヌ川の左岸。
ジュミエージュは右岸にあるので、川を渡る必要があるのですが、この辺りを流れるセーヌ川には橋がなく、何ヶ所かに設置されたバック « bac » というミニフェリーで川を渡ります。
↑バックに乗り込んで対岸へ。
待ち時間も含め10分ほど。
ジュミエージュはとても小さな街なので、修道院はすぐに見つかりました。
シーズンオフもあってか、レストランは1軒しか開いてません。
その割に観光客はまあまあいて、車を見ると、フランスはもちろん、デンマークナンバーがちらほら。
この辺りはヴァイキングの歴史地でもあるので、ちょっと納得かな。
それでは、見学開始です。
ジュミエージュ修道院は、カロリング朝建築とロマネスク建築が合わさったスタイルで、ノルマン・ロマネスク美術の重要な作品とされています。
修道院は、654年に聖フィリベールが創設し、急速に発展したベネディクト会院です。
700年頃には、900人の修道士と1500人の使用人がいたらしく、当時の繁栄規模がうかがえます。
しかし、841年に、セーヌ川を上ってきたヴァイキングの襲撃により荒廃。修道士たちは10年間ほど、ここを放棄しました。
その後1067年にノルマンディー公ウィリアムが修復し、かつての繁栄を取り戻します。
1790年に最後の修道士が去った後は、国有財産として売却。フランス革命後は、採石場として使用されました。
その後、私有地や国有地を経て、現在は県有地となっています。
↑ノートルダム教会
ノルマン・ロマネスクの傑作とされるこの教会は、1040年から1066年にかけて建設されました。
現在は、壁の高さ25mの身廊と、ファサード両側に46mの2つの塔が残っています。
内陣や後陣は、部分的に基礎が分かるくらいで、まったく残っていません。
↑11世紀ノルマン彫刻の柱頭飾り
↑なんだか気持ち悪い
↑サン・ピエール教会(左)
ノートルダム教会(右)
カロリング朝時代のサン・ピエール教会と、ノートルダム教会は通路でつながっていました。
↑ゲストハウスと図書館
12世紀に建てられた、ゴシック様式のゲストハウスで、高位の賓客を迎えていました。
13世紀になるとゲストルームは地下に移され、17世紀に地下はパントリーになり、上層部は増築して図書館が作られました。
↑グロテスクな人物装飾
↑門番小屋
門番の建物全体は14世紀の建築で、私有地時代の19世紀に、ネオゴシック様式の住居に改築されました。
現在では、売店や展示スペースになっています。
↑パン工房
17世紀の修道士たちが、パンを焼いていた台所。
15haある敷地では、菜園はもちろん、なるたけ自給自足をしていたようです。
ちょっと寄り道「大時計」と「ルーアン大聖堂」
帰りにルーアンを少し寄り道観光したので、紹介します。
この街はパリのように、真ん中にセーヌ川が流れていて、散策エリアは右岸にコンパクトに集中しています。
見どころは点在しているので、全て観光するとそれなりに時間は要りますが、私は大聖堂周辺の中心街だけを、1時間ほど観光しました。
ルーアンといえば、ジャンヌ・ダルクが刑に処せられた街として有名ですね。
その処刑が行われたヴィユーマルシェ広場から、そう遠くないところに、この「大時計」はあります。
↑「大時計通り」Horlogeは女性名詞なのにナゼか男性名詞扱い。
↑街のシンボル大時計 (14世紀建造)
ディスク等含めたメカニズム全体の重さは400kg。文字円盤の直径2,50m、時計を飾る四角い外枠は4,60m x 3,80m。外枠上部にある球体は、月の満ち欠けを表すもので、直径30cm。文字盤下部にある窓枠は、週の曜日を示すもので、各曜日が該当する惑星のギリシャ神で示されます。
↑ルネッサンス様式のアーチ
かつて羊毛産業が盛んだった街の象徴として、かわいい羊が至る所に描かれています。
興味のある方は、時計の内部構造を見学をすることもできますよ。
つぎは大聖堂を見てみましょう。
↑「ノートルダム大聖堂」のファサード
12世紀にロマネスク様式の聖堂の跡地に着工され、1544年に完成した、当時のゴシック美術満載の美しい大聖堂。
壁面を飾る透かし彫りの彫刻は、まるで刺繍みたいに繊細です。
ファサードの中央門のタンパンは、キリストの系統樹の図像である、エッサイの木がモチーフになっています。タンパンでこのモチーフは初めて見ました。
そして、左右の門の上部にあるアーチ部分には、薄く石を切りとる技法による影絵風の装飾が施されており、オリエンタルな風味が漂っています。
↑ファサード向かって左手のサン・ジャン門のタンパン
このタンパン上段には、使徒ヨハネの生涯「神秘の道」、下段には洗礼者ヨハネの「ヘロデ王の饗宴」「サロメの踊り」「ヨハネの斬首」が描かれています。分かりやすい素直な描写です。
↑リシャール獅子心王の心臓が眠る
大聖堂の回廊にはノルマンディー公爵たちの墓、ヴァイキング出身で公国創始者のロロ (現在は石棺の中は空) や、イングランド国王リシャール獅子心王の心臓が安置された墓があります。
↑図書室と文書保管室への「司書の階段」
ルーアンはパリから電車で2時間ほどなので、コンパクトな観光なら日帰りもできますが、歴史芸術の濃い街なので、一泊して美術館などゆっくり散策するのが良さそうです。
ゴシック美術が好きな方は、かなり楽しめそうな街ですので、ぜひ。
それではまた♪