第二次大戦ドイツ占領下のパリ。闇市のブタ肉を詰めたスーツケースを持って、ドイツやフランスのパトロールを避けながらパリを横断する話。

商売にまつわるフランス人たちの生活や人間模様がコミカルに描かれています。白黒なので画面は暗いですが、作品の放つ印象はとても明るく軽快。

ギャバン、ブールヴィル、ドフュネスといった個性ある俳優たちの演技も見モノです。

  『パリ横断』
原題 « La Traversée de Paris »
監督 クロード ・ オータン -ララ
原作 マルセル・エメ
出演 ジャン・ギャバン
   ブールヴィル
   ルイ・ド・フュネス
公開年 1956年
上映時間 80分
ジャンル コメディ・ドラマ(白黒)
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Table des matière

あらすじ

失業中のマルセル・マルタンは、ヤミ市の商品の運び屋をしている。彼は、警察に捕まった相棒の代わりを見つけなければならなかった。

ある夜、彼はカフェでグランジルという男に出会い、とある仕事を持ちかけられた。その仕事とは、豚肉の入ったスーツケース4つを、肉屋ジャンビエのところからパリの反対側まで配達することだった。ふたりは豚肉の入ったカバンを両手に、歩いてパリを横断しはじめるが …

感想

占領時代のパリ、市民の買い物が配給チケットで制限されていたころの話です。当時の闇市ってこんなだったのか、と興味深いリアルな出来栄えでした。

肉屋は、こっそり買い物にくる金持ちのために商品を大量に隠し持っていたり、闇で仕入れたブタの声を音楽でかき消そうと小細工したり、いつバレるかとビクビクしながら生活しているのです。

マルタンとグランジルも、豚肉の入ったスーツケースを、ドイツやフランスの警察の目をごまかしながら運びます。そして街には、そんな闇商売をする人たちを冷たい目でみる人たちもいます。

戦時中の緊張していたパリ市民の生活を、人間くささ満載、かつ軽快に描いてあります。作品のテンポは速い方ではないけど、退屈することもありません。丁寧に仕上げられたドラマです。

登場人物も個性的でした。マルタン (ブールヴィル) は元タクシー運転手で失業中の身。生き延びるために、闇市の荷運びの仕事をしてお金を稼いでいます。実直で勇気もあり、妻に嫉妬したりもするけど穏やかな人物。グランジルの職業をペインターと聞いて、ペンキ職人の方だと勘違いしたり、天然ボケっぽさも持ち合わせる愛しいキャラです。

ブールヴィルの持ってる喜劇能力を100%出せる設定ではないけど、彼の人のいい雰囲気にはピッタリでした。外見でオーラを振りまくタイプの俳優ではないですが、フニャっとしつつも主役級の存在感を放つことのできる、すてきな俳優です。

 

対局なのが、グランジル (ギャバン) 。すぐカッとする強烈な皮肉屋。「金持ちがドイツ人を前にして怖気づくのは、失うものがあるからだ!貧乏人が同じことするとは、その人間性にガッカリだぜ!」てなことを、カフェにひっそり集う貧乏人たちに向かって吐く(カツ入れてるともとれる)ような人。でも彼、実は絵画ファンには名の知れた画家なのです。裕福な彼がヤミ仕事を引受けたのは、リスクを冒して楽しんでみたかったからとか。。。

なんとも感じ悪い金持ちですが、マルタンと一緒にドイツ側に捕まった時は、人間らしさを見せます。画家として有名な彼だけ特別室へ呼ばれる時、マルタンも連れて行くのです。ちょっとイイ奴な面が垣間見えて、ホッコリします。でも結局、グランジルの機転の甲斐なく、マルタンは悲しくも強制労働施設に運ばれて行くのです。当時を思うと、こういうクダリは本当にさみしいですね。

以下、結末バレます。

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そして数年後、リヨン駅での再会の場面。

裕福なグランジルはキレイな身なりをし、ポーターにスーツケースを持たせて駅のホームを颯爽と歩き、列車に乗り込みます。ポーターから荷物を受け取ってチップを渡した時、それがすっかり老け込んだマルタンだと気付くのです。

そこで彼がマルタンに一言「おまえ、まだ人のスーツケース運んでんのか〜(笑)」と。スノッブで超イヤ味な奴だけど、妙に人間臭いこのキャラが、ギャバンにとても似合っていたと思います。ギャングのボス役でないギャバンも素敵ですね。

ちなみに、本作で映画デビューした、肉屋ジャンビエを演じる脇役のドフュネスですが、既に動作がガチャガチャとうるさく、すごい存在感で… ここから彼は、フランスを代表する喜劇映画俳優の大物になります。

おまけ

本作品の原作者はマルセル・エメ。彼はこの数年前に『壁抜け男』という作品をブールヴィル主演で映画化しています。ですがエメは、この『壁抜け男』の出来ばえが大キライだったのです。そのため監督オータン-ララが、本作にブールヴィルを採用すると言った時は猛烈に反対。監督はどうしてもブールヴィルを使いたかったので、キャスティング権を確保するために、プロデューサーからの予算50%カットを受け入れます。

それに伴い、予定されていた作品のカラー化は実現できませんでした。でもこの作品は大成功を収めたので、のちにマルセル・エメはブールヴィル採用が良かったのだと認めたようです。

この作品、最後のリヨン駅でのシーン以外は、ほとんどスタジオで収録されました。セット製作には著名な美術担当者を雇ったのですが、ある意味、白黒作品であったのは正解だったようですね。

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