雨のモンティニアック=ラスコー

【ラスコー洞窟】2万1千年前のクロマニョン人の壁画美術を鑑賞する

雨のモンティニアック=ラスコー

長らくご無沙汰していました。ブログ復帰、嬉しいかぎりです。

また定期的に発信していければと思います。

 

さて、この春休みは、洞窟を探検して来ました。

今回訪れた所は、パリから車で南南西へ6時間ほど走った、ドルドーニュ県のラスコー洞窟と、ロット県にあるパディラック洞窟です。

この辺りは旧石器時代の遺跡が数多くあり、緑の自然も潤いがあって美しく、地形も表情豊かで、情緒ある小さな町が数多く点在する魅力的な地域です。

今日はまず第1報、ラスコー洞窟から紹介します。

 

ラスコー2で先史時代にタイムスリップ!

1940年に、地元の少年たちによって発見されたラスコー洞窟は、壁画の劣化を食い止めるため、1968年に閉鎖されて以降、観光客が内部を見学することはできません。その代わりに、ラスコー2・3・4がレプリカとして作られました。

ラスコー3は世界を旅する移動展示用、ラスコー2 (1983年開館) とラスコー4 (2016年開館) は常設で、モンティニヤックの町外れにあります。

ラスコー2と4の違いは、2は小じんまりクラシック仕様、4は予算80億円かけた豪華ハイテク仕様です。2はオリジナル洞窟の一部200m分の85%の壁画を再現しており、4ではほぼ全域をカバーしています。

私はラスコー2を見学しました。見学はグループ単位で1時間のガイド付き。写真撮影は禁止です。

オリジナル洞窟の近くに穴を掘って作られたラスコー2は、壁画だけでなく、坑道の傾斜や岩の張り出し具合まで、実物に近い臨場感を丁寧に再現してあり、かなりの出来栄え。

Lascaux painting.jpg
Par EU — Travail personnel, Domaine public, Lien

↑(画像はWikipediaより)

2頭の雄牛が向かい合っているこの有名な場面、写真ではいまいちサイズ感が掴めませんが、牛の実物大を狙う勢いで描かれています。そして、岩の凹凸を上手く利用して、動物に立体感をもたせてあり、クロマニョン人の見事な芸術的バランス感覚と、配色センス、技法の高さも窺えます。

洞窟全体が、躍動感あふれる大勢の動物に囲まれている様は、まるで走馬灯のようで迫力満点!

この大作をトーチの灯りの下で描いた?あんな高い所にどうやって?これが2万1千年前の人の芸術センス?

オレンジ色に薄明るく照らされた壁画をあんぐり見上げながら、色んな疑問や感嘆が湧き上がりました。

レプリカでもこれほど感動するのに、オリジナルの2万1千年前の天然フレスコ画は、どれほど美しいのでしょうか。

そんな夢見心地の頭で地上に出て太陽を見た時は、急に現実に引き戻されたみたく、不思議な感覚がしました。まるで2万年前にタイムスリップしていたかのよう。先史時代の人が洞窟の奥深くに壁画を描いたのは、トランス的な儀式に使ったのではと考えられているのも、満更でもない気がしました。

ラスコーのミステリ〜画

ラスコー壁画群には、有名なミステリー画があります。それがこれです。 ↓(画像はWikipediaより)

La scène du Puits.Par I, Peter80, CC BY-SA 3.0, Lien

基本的にラスコー洞窟には「人」の存在が描かれていません。しかし、ある一ヶ所だけ、意味深な人物像が描かれた「井戸の場面」とよばれる画があります。

お腹から腸が出た牛、鳥の頭をした4本指の人らしき物体、鳥柄の槍、犀、が一同するシーン。これが、井戸のように5mほど落ち込んだ、アクセスしにくい場所に描かれているのです。一体何を意味するのやら?

この鳥人間は、雄牛にやられたシャーマンだという解釈が主流なようです。しかしこの筆のタッチ、他の群像画に比べてやたらと稚拙なのが、また謎を深めています。ちなみに、この箇所はラスコー2では再現されていません。

ラスコー2は、現世の喧騒から逃れて、素朴に見学をしたい人にはもってこいです。もし最新型の情報発信を好む人なら、ラスコー4の方が満足できるかもしれません。

雨のモンティニアック=ラスコー

ラスコー洞窟の街モンティニヤックとヴェゼール川

ラスコー洞窟はモンティニヤックの町外れにありますが、この町自体はさほど観光名所ではありません。街歩きやレストランを楽しみたいなら、モンティニヤックから車で15分ほどの町サンレオン・シュル・ヴェゼール (Saint-Léon-sur-Vézère) や、車で30分ほどのサルラ・ラカネダ (Sarla-la-Canéda) がおすすめです。

次回はパディラックの洞窟を案内します。

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