仏映画【CONTRE-ENQUETE】デュジャルダンがドラマチックな役に挑む

《CONTRE-ENQUETE》コントル・オンケット。

コメディ以外でフランスの俳優ジャン・デュジャルダンを観るならこの作品です。芯のしっかりした俳優で、観ていて安定感があります。この映画では、子供を失った父親の心を説得力ある演技で表現していました。

この事件で捕まった犯人は実は無実なのか?元警察官歴20年の監督が、経験を生かして作り上げた作品です。

Table des matière

作品情報

原題  "contre-enquête"
監督  フランク・マンクーゾ

出演   ジャン・デュジャルダン
     ロラン・リュカ
     ジャン–ピエール・カッセル
 公開年   2007年
上映時間  85 分
ジャンル  刑事
言語   フランス語

あらすじ

殺人事件捜査班長であるリシャール・マリノフスキは仕事におわれる多忙な日々をおくっていた。

ある日、彼は自分の娘と一緒に一日をすごす予定だったが、突然仕事の連絡が入り急いで職場に向かった。
そして彼が家に帰ったとき、彼の娘はいなくなっていた。

娘は遺体となってすぐに発見され、容疑者ダニエル・エックマンもつかまり小児殺害で有罪となった。

ダニエルは刑務所からリシャールに自分の無実を訴える手紙を送っていた。リシャールは徐々にダニエルの無実を自問しはじめ、ひとりで事件の再捜査を開始する。

感想

ジャン・デュジャルダンのこんな役が見れるとは、びっくりしました。人気テレビシリーズのUn gar une filleなどのコメディアンとしての印象が強烈な俳優なので、こういう真面目でドラマチックな役はどうかと心配でしたが、ところがどっこい。とても説得力のある、そして違和感のない、素敵な演技でした。

殺人犯役のロラン・リュカもすごかったです、サイコパス感満載で。俳優陣は固いキャスティングだったと思いますが、登場人物がみんな型にはまった像だったのが惜しかった気がします。もう少し個性あるキャラ設定をしてあれば、役者さんらがもっと底力を発揮できたのではと感じました。

作品としては全体に綺麗にまとまっていたのですが、テレビ映画なら完璧だけど、映画としてはスケールに欠けたかなぁと思います。

なにより途中からストーリーの予測がついてしまいました。まあ、あくまで予測なので最後まで観るのには差し支えのないことなのですが、ワクワク感が半減したかな。取り扱っているテーマも、ペドフィルの犯罪と重いテーマであるにもかかわらず、ストーリーだけ追って、すべてが型どうりにサラっと流されてしまった感じです。登場人物の心理面にも深く切り込んで欲しかったです。

監督フランク・マンクーゾはパリ警視庁の元捜査官。同じく元警官であったオリヴィエ・マルシャルが監督した映画『あるいは裏切りという名の犬』(原題《36 Quai des Orfèvres》)の成功を意識しすぎたのでしょうか。ライバル心で焦ったのか。。。

途中、刑務所にいる殺人犯と文通をする女性たちがいると分かるシーンがあるのですが、これ、実際にあるんですね。知らなかったです。見ず知らずの囚人たちをメンタル面で支えるために、個人的に文通する女性がいるんだとか。

この映画でも、3年間文通を続けて、彼が出所した時に初めてお互いの顔を見てお付き合い ? みたいな設定になってました。そういう、現実に即した情報を入れるのはさすが、元刑事のなせる技でしょうか。実際に文通相手を利用して脱出とかありそうですね。

 

以下ネタバレ

 

この話の結末は「ああ、そうくるか」という感じでした。この映画の問いはやっとここ、最後5分でわかります。「復讐心は生きる糧になるのか」ということ。ひとりでこっそりと、奥さんにも黙って事件の再調査を開始したのも、すべては復讐のため ? でも、この問いかけも尻切れトンボなんです。子を無くした親の悲しみを描きたかっただけ?とも取れてしまいました。

もう少し、そこからストーリーを派生して欲しかった。テーマに重いものを扱っているだけに、なにかグッと心に語りかける後味を期待していたので、スカされた感じです。

とまあ、いろいろ意見を連ねてしまいましたが、テレビ映画としてはサラッと観れる作品だと思いました。

最新情報をチェック