雹

「初めてには願い事を…」ミニ録 #8

雹

「初めてには願い事を…」

雹

とある夏の始め、雹が降った。

いきなり空が真っ黒になったとたん、バコバコという激しい音が家中に響き渡った。

何事かと窓の外を見ると、庭の芝生がものすごい速さで、氷で埋もれていくではないか。

初めての経験に呆然と外を眺めていると、ご近所さんが慌てて出てきて、高級車のフロントガラスに毛布をかけるのが見える。

その光景にハッと我に帰り、私も慌てて犬を家の中に入れ、雨戸を閉めた。

 

ここパリでは、霰が降るのは珍しくないが、雹は珍しい。

私の人生においても、初めての雹である。

これも気候変動による地球温暖化のせいかとしばらく真顔で耽っていると、やっぱり聞かれた。

「で、願い事した?」

フランス人は初めての事に出会うと、ひとつ願い事をするのが好きである。

それも上手いことして、何でも「初めて」に持っていく。

「今年初めての〇〇」とか言って。

 

何かしら託けてフェットをするのが好きな人たちなので、大きな被害もなく済んだ「雹」に願い事をするのも、まあ不思議ではない。

昔は、彼らのこの短絡的にも思えるノリに戸惑ったものだが、いつの間にか、小さな事にも前向きになれるこの陽気さが、幸せへの近道だと思うようになった。

今では私も、すぐに願い事をしている。