「そそる階段」ミニ録 #6

「そそる階段」

フランスに来てから、「階段」マニアになった。

階段を見たら普通はウンザリするのだけど、なぜか胸の奥底をくすぐられるような感覚がして、無性に上ってみたくなる階段があるのだ。

私有地内の階段であることも多く、その場合は辛いけどグッと我慢する。

上りたくなる階段というのも変な話だが、飛び出し具合が絶妙で、押したくなる「ボタン」があるのと同じ具合かも知れない。

 

ところで、その「そそる階段」たちは、年季からくる佇まいが独特である。

もちろん古いだけではだめで、ヴィンテージとか骨董と呼ばれる物のように、手入れされた温かみを感じるかどうかが大切である。

素材は断トツに石。ちょっと斜めになってるくらいザックリ積まれ、素朴でふんわりしたデザインに惹かれる。

木製でも、木肌の美を感じる年季の入った素敵な階段もあるのだが、なぜか全体的に寒い印象がして、あまり惹かれない。

階段と周りの風景とのバランスや、設置場所の意外性など、いろんな要素があっての「そそる階段」なのだろう。

この階段を上ったら、どんなところに辿り着くのかな…と好奇心に語りかけてくる。

そんな階段はとりわけ南仏に多く、ここ数年は旅をするたびに「そそる階段」ばかりを探して、街探訪している。