フランスアルプスで見たエーデルワイス

「高嶺の花」ミニ録 #5

フランスアルプスで見たエーデルワイス

高嶺の花

フランスアルプスで見たエーデルワイス

私の世代で「エーデルワイス」は、子供のころから馴染みのある単語。

小学校の音楽では歌やリコーダーの練習曲だったし、エーデルワイスは単にその曲名だと思っていた。

ほどなくして、『サウンド・オブ・ミュージック』を観て大感激する。

ドレミの歌、私のお気に入り、すべての山に登れ…

聞いたことのある曲が、続々と流れてくる。

作品のストーリーがまた素敵で、観終わった時には、私の心は愛の温かさに満たされていた。

そこでやっと、エーデルワイスは「花」だと知る。

それも、そう簡単に摘める所には咲いていない、愛と勇気を表す、高嶺の花だとか。

これほど有名なエーデルワイスという花は、どんなに美しいのだろうと子供ながらに想った。

 

数年前の夏、アルプスのシャモニーをトレッキングしたとき、昼食を摂った山小屋の草むらで、エーデルワイスがミントに紛れて咲いているのを、友人が見つけた。

予期せぬ発見に、私は彼が指さす所に飛びついた。

子供時代の私を感動の渦に巻いた、あのサウンド・オブ・ミュージックの花は、友人に指摘されなかったら見過ごしていたような素朴な花だった。

というか、可憐で美しいというイメージを勝手に膨らませていたので、意外に無骨でマスキュランな印象を受けて驚いた、というのが正直なところ。

 

エーデルワイスはドイツ語で「高貴な白」を意味するそう。

確かに白の色味が陶器のような質感なので、群生しているとキラキラ星のようで目を引くかもしれない。

しかし、花を観察すればするほど、私には高嶺の美女が、どうにも不思議な姿に見えて仕方がなかった。

なんと形容したものかと迷っていると、友人が言った。

フランス語では、学名由来でPied-de-lion「ライオンの足」とも呼ぶらしい。

それを聞いて、私はやっとしっくりきた気がした。